夜高の筆

全般

前回のブログで夜高の絵具についてお話ししましたが、筆について問い合わせがあったので、まとめます。

夜高用筆の特徴

 一般の書道や絵画用の筆は常温で使うことを前提に作られています。一方、染色では染料を熱いお湯で溶いて使うことがあり、特にローケツ染めでは、熱く溶けた蝋で絵を描くために、耐熱性を重視した筆(ローケツ筆)を使います。具体的には筆の穂首を止める接着剤を耐熱性・耐久性の高いものを使用するそうです。ただ、従来のローケツ筆は太いものが多く、最近の夜高のように高精細の絵図を描くには少々難がありました。そこで、当店では仕入れ先の筆の職人さんにお願いして、ロウ引き・絵塗のいずれにも使える耐熱性の高い小筆を作ってもらいました。

夜高用筆 一本150円~450円です。

現在のラインナップ(2025年4月)

夜高用小筆は使い勝手や好みに合わせて5種類ございます。選び方としては、穂先が細いほうが細かく描きやすいのですが、穂の長さが長いと力の入れ方が難しくなります。また、穂の長さは長いほうが液を多く含むために長い線を引くことができます。

ローケツ筆の使い方の基本

  • 新しいローケツ筆を直接熱い蝋に浸けると毛にウエーブがかかり使えなくなってしまいます。そこでいったんお湯で穂先を柔らかくして水分をふき取って使用するか、蝋を低い温度から高い温度に上げる段階から穂先をやさしく蝋にいれて徐々になじませます。
  • 電熱器と鍋で蝋を溶かしている場合は鍋の底に穂が触れないようにします。穂先の毛が焦げるとクセがつき使えなくなります。
  • 使用するときは、筆の根元まで熱い蝋を含ませると冷えにくく長い線がかけます。穂先だけ蝋に入れるとすぐに冷えて描けなくなります。
  • 使用後、蝋がついたまま放置すると固まって、次に使うときにクセがついたままで使いにくかったり、無理に直すと毛が抜けたりします。使用後はお湯に浸し、筆についた蝋を溶かしてやさしく拭き取り、穂を下向きに吊るして風通しの良いところで乾かしてください。

染料筆の使い方の基本

  • 乾いた筆を直接染料液につけてしまうと、筆の根元(穂首)まで染料が染み込んでしまい、古い色がそのまま残って色が濁ります。使う前に毛だけでなく柄の部分もしっかり水で濡らしておき、余分な水分を吸ってから染料液に浸けます。
  • 獣毛は成分がタンパク質なのでアルカリに弱い性質があります。そのため、洗う時の洗剤は石鹸等でなく中性洗剤が良いでしょう。染料の酸性染料・塩基性染料とありますが染料液そのものは、ほぼ中性で、染色するときに使う助剤が酸性やアルカリだったりします。夜高ではおそらく助剤は使ってないので、中性洗剤を使うことに気をつければ大丈夫でしょう。
  • 使用後は水や中性洗剤でよく洗い、拭き取り、穂を下向きに吊るして風通しの良いところで乾かしてください。根元の部分が濡れたままだと腐敗して匂ったり、毛が根元から切れて使えなくなります。

皆さんのお声をおきかせください!

当店では砺波野の伝統ある夜高祭りをお支えするために、夜高作成時のさまざまお声をお聞きして品ぞろえをすすめております。ご来店お待ちしております。

参考文献
・高橋誠一郎・北川一寿著 「染色の基礎知識 合成染料の技法」 2005年6月2日発行 

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